こんにちは!KIRA(@kilagoro)です。
今回は、10年前の7月に亡くなった、大好きな私の祖父の、掛け時計のお話を。
- ゼンマイ式の時計に興味がある
- アンティーク時計を使ってみたい
- 昔の時計のことが知りたい
- 昭和の時代の雰囲気が好き
- おじいちゃんとの思い出がある
私の祖父
まずは少し、私と祖父のお話から。
祖父には、私と私の姉、いとこのひろしくん、という3人の孫がいて、
誰よりもおじいちゃんっこだった私は、祖父のことが大好きで、いつも祖父にくっついていました。
そんな祖父も、私をすごくかわいがってくれて、3人の孫の中でも私が一番年下と言うこともあり、ひときわ私のことをいつも気にかけ大事に大事にしてくれる、そんな祖父でした。
昔の祖父は、毎日毎日自分の山へ出向き、山の木を切っては炭焼き小屋で炭を焼き、炭焼きを生業としていたので、
今でも祖父の山には、かつて祖父が炭を焼くときに、山を守ってくれていた神様がいらっしゃる小屋が残っています。


母からの電話
83歳で亡くなった祖父は、亡くなる2週間くらい前までは電話で話せるくらいの状態で入院中だったんだけど、その後すぐに昏睡状態に入り、あっというまにお別れを迎えることになりました。
その頃の私はというと、まだエス氏とは恋人同士の状態で。
ある日のこと、
エス氏と結婚を前提とした同棲への準備期間中に、母から
『エス氏君を連れて、一回じいちゃんの入院先に会いに来たほうがいい』
との電話が。
2週間前に入院中の祖父とは電話で話をして、最後に祖父は私にいつものように
『ほな、またな。』
と言って、電話を切った。
こないだ電話で話したばっかりやのに。
と思いつつ。
そのうちエス氏を連れて同棲の報告をしようと思っていたし、母さんもじいちゃんとエス氏を会わせなさいと言うし。
母から電話があった翌日、早速エス氏を連れて祖父が入院する病院へ、会いにいきました。
危篤の祖父
翌日、エス氏を連れて、病室に入った私の目に飛び込んできたのはほんの2週間前に元気な声で電話で話した祖父‥
ではなく、ベットの上にあおむけになり、話すこともできずにただ眠る、私の知らない祖父、でした。
想像していたいつもの祖父の笑顔とはあまりにもかけ離れすぎた祖父の姿に、一瞬戸惑って涙がこぼれて、病室で祖父に付き添っていた父と母の顔を見ると、母が
『離れて暮らしているKIRAには、心配かけるからと思って言うのが遅くなったんやけど…じいちゃん、もうしばらくこの状態なんよ。』
と、私に言う。
祖父に駆け寄って、ガリガリに痩せ細った祖父に抱きつき、
『じいじい、じいじい。』
と、泣きながら話かけました。
あぁ、そう言えば、子供のころ、
小川に架けられた木の橋を一人で渡ることが出来ず、今日みたいに『じいじい、』って呼んで泣きながら、じいじいの背中におんぶしてもらって、小川の橋を渡ったな。
逆にじいじいをおんぶできるくらいに、私は大きくなったわ。
祖父とエス氏の対面
母が
『エス氏君、じいちゃんの手握ってあげて』
と、エス氏に言う。
『おじいちゃん。』
と、エス氏が祖父に話しかける。
すると、それまではずっと寝たきりだった祖父は目をしっかりと、パッと見開いて、エス氏の顔を見つめ始めました。
『お母さん、じいじいが起きたよ!!!』
と、私が母に言うと、父も母も、驚いたようすで。
ずっと目を閉じていた祖父が、KIRAとエス氏君に会えて目を覚ました、と。
『じいじい、私な、結婚するよ!結婚式もするよ、じいじいに来てもらわんと結婚式出きんけん、じいじい絶対に結婚式来てよ』
なんとかもっと反応してほしい、笑ってほしい、と、
祖父の生きる気力に火を灯せそうな言葉を祖父に話すと、祖父は
コクン、と1回だけ頷いて、エス氏の顔をまた目に焼き付けるように見つめる。
それが、大好きな祖父と私の、人生で最後の会話になりましたとさ。
あの日、エス氏に会ってもらえて、本当によかったなー。
まだまだ話したいことは、いーっぱいあったけど。
祖父と最後に会ってからもうすぐで、ちょうど10年。
もう10年も会ってないんやなぁ、としみじみ。
祖父が遺した、ゼンマイ式の掛け時計

祖父が住んでいた家には、今もまだ祖母が一人で住んでいるんですけど、今でも時々お墓参りだったり、祖母の顔を見に遊びにいきます。(一人で住んでてめっちゃ元気)
先日、父母とエス氏と、祖母の家に遊びに行っていたときのこと。
ホコリまみれの掛け時計
物置のように使われている小屋で、荷物の片付けをしていると
ホコリにまみれてボロボロの、古ぼけた茶色い時計を見つけました。
その時計は、小屋の中の柱に掛けられていて、もちろん針は止まったまま。
普段なら何も気にしないような、言ってしまえば、ただのガラクタのような、そんな時計なんですけど。
そのときなぜか気になって気になって。
思い切って柱から時計をおろして、まとわりついたホコリやゴミを拭いて、きれいにしてみよう、と思いまして。
濡らしたタオルと時計を持って、祖母の家の縁側に座りこんだときに。
『その時計、どうしたん?』
と、母の声。
『物置で見つけたんよ。動くんかわからんけど、きれいに拭いてみようと思って。』
そう答えると、母の横にいた父が
『その時計、じいちゃんが若いころからずっと使ってたやつやなぁ。』
とつぶやきました。
『あーそういえば!お母さんがお嫁に来たときは、ずっとこの時計使ってたわ。』
と、母も言います。
え!?じいじが使ってた時計…!!まだ使えるんかな・・?
使いたい!
どうにかして、また蘇らせて使いたい、、!
もう使えない…?掛け時計の返事を待つ。
父『でもそれ、動くか?』
母『いやー…これ、電池じゃないからなぁ』
父『もう何十年も使ってないと思うぞ。扉、開けてみ。』
母『あー。もうゼンマイを回すネジが無いんちゃう?』
父『どれどれ…。。あ、あったあった!!』
と、父と母が時計を囲んであれやこれやと相談している話の内容は、私にはイマイチよくわからない話で。
ただ、父と母の話の内容からなんとなーくわかったことは、
- 祖父がまだ若いころ、大事に使っていた時計である
- 電池で動く時計ではなく、ゼンマイ式で動く時計である
- しかし、時計として動くかどうかはわからない
- 壊れているかもしれない
- 部品がなくなっているかもしれない
ということ。
あーだこーだと言いながら、相談をしている父と母。
じいじいの時計が、どうか動きますように、、と祈る私。
しばらくして、祈る私の思いが通じたかのように、父が
『ゼンマイ、回るわ!使えるんちゃうか?』
掛け時計、私の部屋で堂々と。

父から聞いた
『使えるんちゃうか?』
という言葉を信じて、自宅へ連れて帰ってきた掛け時計。
大好きなじいじいが若いころ、大事に使っていた掛け時計。
どうやら、
”ゼンマイ式” と、呼ばれるらしい。
使い方もお手入れも、その仕組みもわからずにふと気になって手に取って、
ただ、【じいじいが使っていた】という事実だけで胸が高鳴り、自宅へ連れて帰ったこの掛け時計は、ググってみたところ、昭和30年代前半に名古屋で製造された時計だそう。
物置部屋の柱で何十年も眠っていた掛け時計は、時を経て、
令和2年、私の仕事部屋へ大移動。
そうとなったらもちのろん、ただの飾りにしておくわけにはいきません。
祖父が使っていたとき並みに、バリバリ働いてもらいましょう。
動き始めた、掛け時計。【使い方】

なにしろ、時計が動かなくなったと言えば
『電池なくなったんちゃう?乾電池、単3?何本使う?』
な世代の私。
ゼンマイシキノカケドケイッテナニ…?
から始まったので、動かし方も使い方もまったくのド素人。
そもそも、じいじいのこの掛け時計がちゃんと使えるかどうかも、イマイチ確信は持てない。
飾りにするわけにはいかん、なんて言ったものの、マジで飾りになるんちゃう?な勢い。
とりあえず調べて、出来ることをすべてやってみました。
このご時世、ありがたいよねぇ。。
Google様に聞けば、60年以上前に製造された時計の使い方までわかるんですもん。
時計の扉を開けてみた

とりあえず、ここを開けておけばなんとかなるやろう、的な雰囲気を醸し出している扉をそっと開けてみました。
どうもどうも、初めまして。
じいじいの孫娘です。
ほうほう、なんだか古臭い匂いがしてきましたわね。
古ぼけた木の匂い。嫌いじゃないわこのカンジ。
ゼンマイを回してみる

こういう、アンティークっぽいカギみたいなの、昔あこがれたなー。
首にぶら下げてたりして。
このネジは扉を開けた中に収納されてて、このネジを使ってゼンマイを回すらしい。

この穴の中に、さっきのネジを入れて回すんですけどね、
右の穴が、針を動かすゼンマイ。

左の穴が、鐘を鳴らすためのゼンマイ。

ギーギー、という感覚の回し方。
- 回しすぎて無理にギーギーすると、ゼンマイが切れるらしい!ある程度まで回して、それ以上回らなければそこでストップね。
- ゴーン、ゴーン、という鐘を鳴らしたくない場合は、左のゼンマイを回さなければ鐘が鳴らないみたい
時計の針を合わせよう。
時計の針を合わせるときのポイントは
【短い針は触らない】

長針だけ回すと、短針も一緒になって回るので、

短針は触らずに合わせましょう。
短針触ったら、なんかわからんけど微妙にズレるんやって。
このときに、長針を文字盤に押し付けてしまうと数字が傷つくので、文字盤に触れないように優しく回します。

長針が12時と6時を指すときに、鐘が鳴ります。(2時なら2回、10時なら10回鳴るよ。)6時のときというのは、30分を指すときに1回だけ鳴るみたい。
針を合わせるとき、12時と6時を指すときになる鐘もスルーせずにちゃんと鳴るのを見届けてから、針を回しましょう。
これもスルーしたら、何かがズレるらしい。何かはわからん。
振り子を振ってみると…
ここまできたら、あとは振り子を振ってみます。


このとき振り子を動かしたのと同時に、
今まで止まったままだった時計の針が
”チックタックチックタック…”
音を鳴らしながら、動き始めました。

じいじい、時計、動き始めたよ。
じいじいは昔、この音を聞きながら生活したり、仕事に出かけてたんやね。
動き始めた針と、鐘の音。
異様に大きい、チックタックの針の音も
ゴーン、ゴーンって知らせる鐘の音も、
コイツ、可愛いやつやなぁ、と、ついついナデナデしちゃいます。
そんな私を遠くから見つめる、キー子の冷たい目な。

かーちゃん、鐘の音、昼寝のときにまぁまぁビックリするよ。
祖父が遺した掛け時計、余談

『21DAY 』
って書かれてるのは何かな?と思って調べてみたところ、この数字は
1回ゼンマイを回しきったら、21日間はゼンマイを回さなくても動くよって意味らしい。
30DAYとか、いろいろあるんやって。
祖父がこの時計を使い始めたのは、祖父が30代なかばのころやから、今の私と同い年くらいのとき。
めぐりめぐって、祖父があの世へ旅立ったあとも、こうして30代なかばの孫娘の私の時間を知らせてくれる、なんかロマンを感じちゃいましたわ。
今も昔も、同じ音。
おわりに
10年前に最後に会った祖父とはもう会えませんが、祖父が遺した時計の音がなるたびに
祖父の存在をふと感じるような気分で、妙にホッコリします。
少し手がかかるけれど、
低くて重い音がと、どっしりしたたたずまいが素敵な、ゼンマイ式の掛け時計。
みなさんも出会う機会があったら、ぜひ鐘を鳴らしてみてください。
じいじい、こっちの世界はコロナで大変やで。
はよ収束するように、そっちからちゃんと見ててよな!

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